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この世の限り/冥冥

「あんたさ、そんなに貯めてどうすんの」

買ったコーヒーをストローでかき混ぜながら、あきらは目の前に座る友人を呆れたような顔で見た。あきらとは逆に暖かいコーヒーを買ったらしい冥冥はゆったりとした仕草でカップに口をつけ、こくりとひとくち飲んだ。それからあきらの方を見てにこりと笑う。

「別に、何もしないよ」
「何もぉ?」

一層理解できないと言った目を冥に向ける。

「金なんかあの世に持っていけるわけでもないのに」
「……ふふ」

ぶつくさ言ったあきらに、冥が微笑みかけた。
カフェのテーブルに両肘をつき、手を組んであきらを見つめる。惑わすような目つきに纏う雰囲気、もし魔女が実在するなら、きっとこんな風に違いない。

「あの世に持っていけないと言うなら、全てがそうだよ。この身でさえもだ。そうだろう?」

今が良ければいいんだよ、とこれまた享楽主義の魔女のようなことを言う友人の笑顔は、有無さえ返せないほど完璧だった。