※学生時代
「ぎゃー!!!!!」
帳の下りた夜の小学校の中、校庭を駆け回る後輩の悲鳴が響く。後ろを這いずる巨体を時々振り返って距離を確かめながら、「先輩ー!!」と必死な声が呼びかけて来て、校舎の屋上からあきらを見下ろす先輩二人は、暢気に顔を見合わせた。
「低級だよな」
「低級だねえ」
「助けてくださーい!」
遠くから声が割り込む。
高遠あきらはついこの間一学年下に編入してきたばかりの新人で、しかも一般出のため、術式を持ちながらも使い方はよくわかっていなかった。呪力のなんたるかも、いまいち理解していない。
追いつめられたら何か学ぶかと思って、囮役をやらせてみたのだが、今のところ効果はないようだ。
「せんぱーい!!!」
引き続き助けを求めてくるあきらに、五条が声を張り上げた。
「どっちの先輩だよ!」
「そういうのっ、いいんでー!!どっちでもいいから助けてくださーい!!」
うわあん、と泣きが入り始めている。
しかしまあ、大したことのない呪霊だし。特級二人がこんな近くにいて、あれを相手に万が一のことは考えられない。もう少しくらいいいだろう。
「もうちょい頑張れ!」
「体力もまだまだだしね、ちょうどいいかもしれない」
「死んだら祟ってやるからなー!!」
とうとう取り繕うのをやめたあきらは、うおおと速度を上げ、迫り来る異形を気合いで少し引き離した。