実家がうるさい。
高専を卒業して数年、仕事も落ち着き、適齢期といえる年頃になってしまってからは特に、攻撃が年々激しさを増している。やれ孫の顔が見たいだの、宗家の娘として血を絶やすなだの、あきらにとってはどうでもいいことばかりだ。のらりくらりと避け続け、終いには条件を出した。
「私より高身長、高収入、かつ強い男なら考えてもいい」
「って言ったの?」
「はい」
手当のついでの世間話でそんな話をすると、家入はふうんと興味なさげに相づちを打った。
「かなりいいと思うんですよ、これ」
高遠あきらは一級術師である。もちろん俸給はそれなり以上のものを貰っているし、背のことはおまけとして、強さも看板通りのものを持っている。並の男では到底満たせない条件だという自覚と自信があるのだ。
今のところ効果はあるようで、新しい見合いの話も来ていない。その辺をしっかり満たしてくれようとするあたり、そこまで悪い親でもないらしい。
当分はこれで時間を稼ぎます、とあきらは鼻を鳴らした。
「でもさあ、それって……」
「あきらより高身長、高収入、強いことってさあ」
穴を突きかけた家入の言葉を引き継ぐ形で、それまでソファーに寝転がって雑誌を読んでいた五条が、いきなり口を開いた。ちょうど死角になっていたのと、無駄に五条が気配を消していたこともあって、そもそも存在に気づいていなかったあきらがひえとよくわからない悲鳴を上げる。
「それ、僕のことじゃん」
「え」
よっと起きあがって、口の端を面白そうにつり上げた五条悟がこちらを見つめた。
僕と結婚したいの?とわざとらしく首を傾げる。
「ち、違います……」
危険を感じたらしいあきらが、立ち上がって家入の後ろへと隠れた。そのうち面倒臭いことになるな、という予感が芽生え、家入はため息を吐いた。