「よお、高遠」
久しぶりに会ったその人は相変わらず適当な服装で、にやっと性格の悪そうな顔をあきらに向けた。
「禪院さん」
「だから伏黒……っつってもやめねーか、オマエ」
訂正の声は無視して、お久しぶりですと頭を下げるとため息が返る。まあいいや、と諦めて、本題に入るべく口の端を吊り上げた。
「高遠。オマエ、賞金かけられてんぞ」
全く過保護な親だなあ、とからかうように言われ、あきらは目を細めた。
数年前に捨てた家のことだ。最近は追手も工作もなく、やっと諦めたのかと思っていたのだが、どうやらそうでもなかったらしい。呪詛師に依頼してでも、あきらを連れ戻したいようだった。
「……それで、私を狙うことにしたんですか」
あきらが尋ねると、男はにやっと笑った。
「どうだろうな?」
「狙ってるなら仕事着で来ますもんね。てことはまだ受けてはいないんだ」
「…………オマエな」
言い当てると途端につまらなさそうな顔をした。面白くなったあきらが笑うと、ますます拗ねたような顔つきになる。
結構年上のはずなのだが、整った顔は年齢が読み取りづらい上、元から悪い子供のような表情をする人だから、そういう気はあんまりしない。
「禪院さん」
「ああ?」
口を尖らせていた男に向かって、あきらは取り引きしましょう、と話しかけた。
「依頼額の倍出します。なので向こうにつくのはやめてください」
「……へえ。で、他の奴らはどうすんだ」
俺だけじゃねえぞ、と続いた言葉を聞いて、あきらはうっそり微笑んだ。
「どうとでもなりますよ。私が怖いのはあなただけです」
「……悪くねえ口説き文句だな」
あきらの言葉を聞いた男が、にやりと笑う。勝ったな、とあきらは思った。
乗った、と宣言した男に、後ほど振り込む旨を伝える。せっかくだから飯でもおごってやるよとの誘いには乗ることにして、上機嫌な彼の後ろを歩いた。
「にしても、よかったです」
「あぁ?何がだ?」
「倍で納得してもらえて」
「…………オイ」
「五倍くらいまでは覚悟してたんですよ、実は」
立ち止まった禪院甚爾を追い越して、あきらはあははと笑う。相変わらず、からかい甲斐のある男だった。