部屋の扉がコンコンと控えめに叩かれたのを聞いて、真希は怪訝そうにそちらを見た。扉を開ければそこには自分のものだろう枕を抱えたあきらが立っている。無言で見つめると、あきらはごまかすようにへへっと笑った。
「ねー真希、一緒に寝よ」
「却下。一人で寝ろ」
「わー!待って見捨てないで!」
言い捨ててドアを閉めようとした真希に、あきらが食い下がる。
「怖いんだよ〜」
泣きそうな、なんとも情けない顔を、あきらは真希に向けた。
一つ下の後輩たちはわりと映画が好きだ。
普段は自分たちの部屋で見ているが、有名な映画だったりすると、共用スペースに置いてある大きなテレビでみんなで見るということがある。
今日はたまたまそういう日で、しかも作品が和製ホラーに影響を受けたという海外のホラーだった。あきらはそれを、最初から最後まできっちりと見てしまったのだ。
「ったく」
「ごめんってば〜……」
狭苦しくなってしまったベッドの中に二人で入る。あきらが泣きそうな声で謝った。
「見なきゃよかったろーが」
「途中で止めるのも怖いじゃん……」
「どうせ作り物だろ」
「それでも怖いし……」
「呪いよりマシだろうが」
いつも何と戦っていると思っているのか。
実際に命を脅かすものが自分達の日常には溢れているのに、今更何を怖がることがあるのか、真希にはわからない。
あきらが「呪霊はどうにかできるじゃん!頑張れば祓えるし!」と反論した。
「でも幽霊はさ、私じゃどうにもできなさそうだから。怖い」
「……そうかよ」
体勢を変えた。あきらに背を向ける。
ごめんってばあ、と謝られるが別に真希もそこまで怒っているわけではない。
「……とっとと寝るぞ」
狭い寝床も、すぐ隣にある誰かの温もりも、何年ぶりのことだろう。京都に残した生意気な妹のことを、真希は少し、思い出していた。