「本当に僕でいいんでしょうか」
布でくるんだ日本刀を抱え、ぎゅっと握る乙骨からは、抱える不安が滲み出ている。
いきなり海外での長期任務、せっかく仲良くなった友達とも引き離され、見知った人間の同行さえなしとくれば、そりゃあ仕方のないことだろう。いくら飛び抜けていたって乙骨憂太は一般出の、十代の少年だ。どうせ五条のことだ、ろくに説明もしていないに違いない。
補助監督の運転する車内で隣に座りながら、あきらはふむ、と考えるような仕草をした。
「里香ちゃんももういません。僕一人で、本当に……」
「まあ気持ちはわかるんだけどさ」
「……」
「少年、暗くなってちゃ何も好転しないよ。とりあえずやってみる無鉄砲さも必要だって」
ポン、と肩をたたいてやるが特に慰めにはなっていなさそうだ。不安そうにこちらを見つめる眉尻は下がったままで、あら、とあきらが声を上げた。
「今のそんなに駄目だった?」
「まあ、そうですね」
運転席から、苦笑とともに伊地知が答えた。
不安を訴える子供相手に、気にするなというアドバイスは確かに何の解決にもなっていない。あきらはうーんと唸り、ああ、と一人で頷く。
「乙骨君さあ」
「……はい」
「あいつの目、特別だって知ってる?」
勿論この場合のあいつとは、彼を海外に派遣することを軽く決定してしまった、ちゃらんぽらんの代名詞のことを言う。少し飛んだ話でも、根が真面目なのかついてきて、乙骨ははいと首を縦に振った。
「詳しくは知りませんけど……六眼とか」
「そうそれ。でもそれだけじゃなくてさー、私、あいつ、人を見る目あると思ってるんだよね」
六眼は、今を見る目だ。過去も未来も見えはしない。だからその生まれ持った能力とはまた別に、五条自身が培ってきた能力として、あきらはそれを認めている。
不思議そうにこちらを見つめる丸い目に向かって、あきらは笑いかけた。
「不安なのは仕方ないけど。あいつが見込んだんなら、大丈夫だって私は思う。だから乙骨も、ちょっとだけ信じてあげてよ」
あんたの先生なんでしょう、とおどけたように付け加える。少し考え込んだ後、乙骨がはい、と小さな声で頷いた。
「どうよ伊地知!」
「今のはよかったと思いますよ」
普段は子供のような言い争いばかりしているのに、同期というのは不思議なものだ。
垣間見えた信頼を、いいものだなあと伊地知は思う。これで乙骨の気持ちも、少しは上向いてくれたらいいのだが。