乙骨がときどき左手の薬指にはめては眺めている指輪が、だんだん黒くなってきた。
たぶん銀なんだと思う。
それが思い出の品だということも、どんな意味での思い出なのかというところも知っているので、あきらは面白くない。でも、机の引き出しに入れていた銀磨き用のシートをわざわざ引っ張り出して、乙骨の目の前に差し出した。
「え、えっと」
「大事なものなんだったら、ちゃんと手入れしなさいよ」
錆びてるでしょと指輪を顎で指すあきらの言葉に、乙骨はうん、と言って、遠慮がちにシートを受け取った。
指輪を指から外し、丁寧に磨いている。そうしながらも、ちらちらとこちらの様子を伺っている。
「何」
「……ううん、何でもないよ。ありがとう」
「ふん」
乙骨が困ったように眉尻を下げて笑っていた。
自分のいない過去に、勝てない相手にそりゃあ嫉妬したりはするけれど。
大事な人の大事なものは大切にしたいという気持ちだって、あきらの中にはあったりするのだ。