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酔っぱらいと五条

酒飲みの思考は理解できない。五条は体質の関係もあって、ほとんど飲まないから余計にだ。同期の家入がたまに二日酔いで真っ青になって自分で自分に点滴までしているのを見るとバカじゃないのかと思うし、弱いくせに考えなしに飲み続け足元も思考もぐにゃぐにゃになっているあきらを支えていると、一体何がしたいんだと呆れる。現在進行形で、呆れている。

「五条〜!」
「はいはい。今夜中だから静かにね」
「わかった!」

ぴっと手を挙げて返事をするあきらを見て、五条ははーと息を吐く。普段は真面目なあきら先生と無茶苦茶な五条先生だが、今ばかりは立場が逆転していた。
消灯の時間はとうに過ぎているが、元々夜が得意な生徒たちが今の時間に眠っているとは、五条も思っていない。あまり騒ぐと生徒たちに見つかるし、酔っぱらってふらふらの教師の姿が見られるのは教育上よくなかった。何より正気に戻った本人が落ち込むだろう。
早く部屋に送って、あきらをベッドにぶちこんでから自分も寝よう。そう決めたところで、五条の腕から、ふらふらとあきらが抜け出す。

「あきら?」
「五条、あのね」

先を行くあきらが振り返って、にっこりと無邪気に笑った。学生の頃からの長い付き合いの中でも、ほとんど見たことのない表情だ。不意打ちをくらった五条が目を丸くした。
あのねえ、と繰り返されて、やっと何、と返せた。

「五条には内緒なんだけど」

酔っぱらいの間抜けさに力が抜ける。いや僕が五条なんだけど。ていうか今五条って呼んでたろ。
突っ込むべきか否か、迷っているうちにあきらはにこにこと口を開いた。

「アンタがいてよかった。いつもありがとね」
「……オマエさぁ…………」

また不意打ちだ。
絶句して足を止めた五条を見て面白そうに笑うと、あきらがこちらに近づいてきて、ふらふらの酔っぱらいとは思えない強さで五条の背中をバシンと叩いた。
手加減というものがないそれを受け止めながら、五条は呆れたらいいのか喜べばいいのか怒ればいいのか決めかねていた。