※学生時代
「動くな」
後ろから体を拘束された。呪詛師と思われる男は太い腕をあきらの首に回し、呪具を頬に突きつけている。あきらだけならまだしも五条も不意を打たれているので、気配を完全に消すとかそういう便利な術式なのかもしれない。
あきらの頭を通り越して男を睨みつける五条の顔は緊迫している。男が続けた。
「顔に傷、作りたくなかったら大人しく──」
言うことを聞け、だったのかそれとも他の要求だったのか、あきらにはわからない。聞き終わる前に袖に仕込んでいた暗器ですぐ後ろの胴体を突いた。よろめいた拍子に拘束から逃れると手に持った呪具を蹴り上げる、急所に蹴りを入れる、男は蹲る。首の後ろに手刀を入れれば立場は逆転、気絶者一名の出来上がりだ。
「高専の生徒相手に怪我が脅しになるかっつーの」
せめて殺すとかでしょとちょっと呆れつつ、呪詛師を見下ろす。まだ中途半端な姿勢で固まっている五条にどうしようか、と話しかけた。
「……補助監に知らせればいいんじゃね」
「まあそうだよね」
「あきら」
「ん?」
「頬」
「ああ」
言われて頬に手をやると、結構な量の血がついている。途端に痛みを感じた。拘束を外した時に傷ついたらしい。
五条は眉を顰めて、帰ったら硝子に治してもらえと言う。
「いやぁすぐ治るでしょ」
「いいから」
ていうか頼れよ、と不満そうに五条は続けた。ちょっと怒ったような声だった。