山で迷った。
行きは呪霊の気配を辿ればなんとなく目的地にたどり着いたのだが、帰りはそういった目印がないので困る。山を下ってはいるが、補助監督の待つ場所に向かっているのかどうか確信が持てない。
五条はふと思い出して、黙々と後ろをついてくる後輩を振り向いた。
「あきら」
「はい」
なんですか、と答えるあきらは元気だ。さすがに汗はかいているが、バテている様子もない。
五条はニッと笑って、
「占え」
とだけ言った。
片方の眉をつり上げたあきらがはあ?という顔をする。
「オマエんち、アレだろ。占いで有名」
厳密に言えば占いではなく何かしらの術式なのだろうが、五条も詳しくは知らない。御三家はおろか高専の上層部にも高遠家を頼る人間はいて、だから少々特殊な立ち位置の家なのだと、そう実家で聞いたことがあるだけだ。
あきらは眉を顰めると、空をちらりと見上げた。木々の隙間から見える空は曇りだ。
「占いと言えば占いですけど」
星も道具もないしとかぶちぶち言っている。いいんだよ適当で、と五条が軽く付け加えた。
「別に当たんなくていいんだって。方向決めるきっかけが欲しいだけ」
「…………」
それはそれでカチンと来たらしい。
ずかずかと大股で歩いたあきらが、草むらから長めの木の枝を拾い上げた。その場に立てて、ぱっと手を離す。当然棒は重力に従って、ゆっくりと倒れていく。
倒れた方向を憮然とした顔のまま指さして、「こっちです」と言う。
「…………上りじゃん」
「なんか文句あるんですか?」
「あるに決まってんだろ!!」
「適当でいいって言ったのは五条先輩でしょ」
生意気な後輩は腕を組んで、ツンとそっぽを向いてしまった。