「それ以上、近づかないでください」
待ち合わせ場所について見慣れた姿を見つけたと思ったら、見たことのあるような顔立ちの子供に道を塞がれた。
状況がわからない。自分の半分も生きていない子供に威嚇され、智はとりあえずその向こうで守られている知り合いに向かって口を開いた。
「オイ冥」
「うん?」
「いつの間に子供産んだんだ」
「産んでないよ。弟だ」
口元を手で隠し、かわいいだろう、と言いながら冥はクスクスと笑う。目の前に視線を戻すとよく似た顔がまだ智を睨んでいた。
どうやら、姉様とやらのボディーガードのつもりのようだ。
やりにくい。
姉の方は笑うばかりでどうにかしてくれる気がなさそうだし、このままだと仕事に支障が出るし、こんなことで金を払う気もなかったから、智は少し迷ってからため息をつく。
その場でちょっと屈んだ。視線を合わせようと思ったのだが、された子供はなぜか一層腹立たしげに智を睨む。
「えーと、弟くん」
「憂憂です」
「憂憂くんね」
相変わらずパンダみたいな名前してんなこいつらと思いながら訂正して、智はぎこちなく、けれども精一杯の笑顔を作る。
「安心しろって。俺別にお前の姉ちゃん、好みじゃねえから」
そして手を伸ばして、宥めるようにポンポンと小さい頭を叩く。
少年はベシッと音を立てて、智の手を払い落とした。
「いってえ!?」
じろり、と子供らしからぬ迫力のある目つきで睨まれ、智はえ、と後退る。
少年が声を荒げた。
「私の姉様の、一体何が気に入らないと言うんです!?」
「…………」
…………いやお前、一体何がしたいの?