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ブレザーが似合わない夏油

※学生時代
※夏油のこと結構ディスってるので駄目な方は読まないでください

 

学校の見回り、というのは呪術師──特に高専に通う学生にとって、結構ありがちな仕事である。なにしろ数が多いし、難易度も低い。経験の浅い学生にはうってつけだ。
基本生徒も教師もいない夜か休日に赴くことが多いのだが、中には平日の昼間にしか出ないとかそういうちょっとレアなポケモンみたいな出現条件のある呪いもいて、そういう時は支給される制服を着て潜入したりもする。

明日夏油が行く予定の学校は、都内有数の名門男子校。
制服は紺のブレザーだった。
しかも結構明るい色の。
 

「すげえ」
 

試しに着てみろよ、とニヤニヤ笑っていた五条が笑いを引っ込める。うるさい親友に付き合う形でわざわざ着替えてきた夏油を改めてまじまじと見てから、

「ぜんっっぜん似合ってねぇ」

と率直な感想を述べた。

「……うるさいな」
「いやマジで。ここまで似合わないとかあるか?」

なあ、と同意を求めて女子二人に視線をやると、硝子は淡々と、あきらはうーんと困った顔で頷いている。四人のうち三人が同意見だ。
色が悪いのかブレザー自体が似合わないのかは微妙なところだが、多分どちらもな気がする。
普段のボンタンが似合いすぎというのもある。何のためにあんなに膨らんでいるのかとかいつの時代の不良なのかとか常々疑問に思っていたが、もしかしたら特徴的なシルエットで注目を集めるくらいでちょうどよかったのかもしれなかった。

本当に似合わない。ちょっとびっくりするくらい、ブレザーが似合ってない。

「何かな、髪のせいかな?」

あきらの一言を皮切りに、原因の分析が始まった。硝子が「切る?」と言いながら、チョキの形を作った手でハサミのジェスチャーをする。

「切ったところで耳でアウトだろ。こんな学生いるかよ」
「確かに」
「もういっそ高専の制服でいいんじゃない?」
「それはそれでさあ」
「まんまカチコミに来た不良じゃん」
「じゃあ……」
「いやそれは」
「でもさあ」

あーでもないこーでもないと立ち尽くす自分をほったらかして話し合いを続ける同級生たちを見て、夏油のこみかみにぴくりと青筋が立つ。着ろというからわざわざ着てやったのに、徹頭徹尾馬鹿にされていては腹も立つと言うものだ。

夏油の苛立ちには気づかず、鈍感な三人はしばらく夢中になって議論を重ねた。

そして。

「わかった」

いかにもいいことを思いつきましたという顔で五条が声を上げる。

「傑」
「……なんだい」
「もうやっぱ普段着で行けよ。保護者のふりして。そっちの方がよっぽど目立たねぇだろ」
「あぁ、いいかも」
「夏油老け気味だもんね」

名案だ、と言いたげに出された結論に、夏油はにっこりと笑顔を返した。

「……三人とも」
「ん?」

似合わない制服を着て立つ夏油の後ろで空間が割れた。一瞬驚いた後、状況を理解した五条が楽しげに笑う、硝子がすっと逃げ道を確認する、あきらがゲッという顔をする。
闇より這い出したそれらを従え、夏油は笑顔のまま「表に出ようか」と言った。