「教師はしんどいよ?」
まず拘束時間が長すぎる。術師としての任務で元々時間がとられるのに、その上反抗期真っ盛りの十代少年少女の面倒を見、各々の事情と能力を鑑みてアドバイスやら稽古やらをさりげなく、本人が受け入れやすいように言ってみたり、上層部からの嫌な圧力に立ち向かってみたり、付き合いも時に必要だから飲みに行ったりしないといけないし。空いた時間にさえ、生徒のことやこれからのことを考える。プライベートと仕事との境界が曖昧だ。
「ホント、おすすめしない。やめといた方がいいってー」
生徒はかわいい。かわいいし、情を移せば移すだけ成長は嬉しいが、同じだけ別れが辛い。呪術師という生き方を選んだ時点で命の保証などは無く、まだ自分の半分くらいしか生きていないはずの子供達の命でさえ、一瞬の油断、ひとつの間違いで失われてしまうのだ。あのときこうすればよかった。自分がその場にいれば。私なら祓えたのに。数え切れない後悔を、死んだ教え子の数だけ積み重ねて、生きて行かなくてはならない。それはとても辛いことだ。だからあきらはこう言うしかなかった。「やめときなさい」「どうせこれから引っ張りだこなんだし、自分から仕事増やすことことないって」
けれど何を言ったって、五条の目は変わらない。
「しんどいのなんて知ってるっつの。でもさ」
「……」
「それでもなったあきらならわかんだろ」
自分一人の強さを突き詰めることに夢中で、いつも隣を歩いていたはずの親友さえ、気づかない間に置いてきてしまった教え子が、こちらをまっすぐ見つめている。痛いくらいの視線に眉尻を下げた。
「……なんでこうなったのかなぁ」
あきらは少し、悲しくなった。