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乱暴されたと思った/五条

※学生時代

 

高専に向かう石段で転んだ。結構上の方から勢いよくごろごろと落ちたので、体のあちこちをぶつけて痛い。一応途中から呪力による防御はしたが、あまりにも突然のことだったので思いつくまでに時間がかかり、しばらく無防備な状態で転げ落ちたためにかなり怪我をしていた。動けないほどでもないし、骨を折ってもいないと思うが、かすり傷と打ち身がひどく、制服は枝か何かにひっかけたのか破れたし、黒いタイツはビリビリだ。

階段でこけたことも怪我をしたことも、何もかもが情けない。呪霊の相手をしてもっとひどい怪我をした時にだって泣かなかったのに、痛みよりみじめさに耐えきれず、あきらはぐすぐす泣きながらさっき落ちた階段を上り、手当をしてもらおうと高専の医務室へ向かった。

「あきら?どうしたの」

そこにいたのは近頃医務室に入り浸りの家入先輩で、あきらはちょっとほっとする。ホッとしたら余計に涙が出てきて、視界が滲んで何も見えなくなった。入り口で立ち尽くし、嗚咽でろくに声も出ないあきらに、人影が歩み寄る。家入だと思ったあきらは、「せ、せんぱい……」と弱々しく声を出した。

「あきら」
「……え、五条せんぱい?」
「それ、」

ところが次に聞こえてきたのは家入ではない、いつもあきらのことを笑ってからかって楽しんでいるめちゃくちゃな先輩の声で、びっくりして体が固まる。肩をがしっと強い力で掴まれた。打った場所だったので痛い、と小さく言えばすぐに力が緩み、そして絞り出すように、目の前に立つ五条が言う。

「──誰にやられたのか、言え」

何かを勘違いしている様子の低い声を聞いて、あきらは思わず泣きやんだ。