昇級の審査を担当することになった。
対象はまだ学生ということで、若い子と話合うかな大丈夫かな、鬱陶しい大人と思われないだろうか、ていうかそもそも実力的に大丈夫なのか、と諸々不安に思うこともあったのだが、五条の教え子と聞けば少しは薄れた。
あれほど鬱陶しい大人はなかなかいないだろうし、そもそも力を疑うのは本人に対しても推薦した術師にも失礼だよな、と思ったのだ。
「じゃ、今日よろしくね」
ちょっと緊張しながら向かった待機室で、五条に少年と引き合わされる。「狗巻棘。ほら、挨拶」と初めて自分が担当する学生の名を聞いた。
「あー、えっと、私は高遠あきら。どうぞヨロシク」
威圧感がないように、声が上擦らないようにと気を遣ってぎこちなく笑顔を見せる。何緊張してんのと面白がっている五条を努めて無視し、少年を見る。目が合うと、口元を隠した彼は小さく会釈をした。
「こんぶ」
「こ……こんぶ?」
まさか初対面の学生から今この場面で聞くと思っていなかった単語が聞こえ、あきらが動揺する。
「ああ、棘は呪言師だから。語彙絞ってんの」
おにぎりの具しか言わないよ、と五条から注意が続いた。はい?とあきらが首を傾げる。
「しゃけ」
言葉とともに大きく丸のジェスチャーをした狗巻を見て、話が合う合わない以前の問題じゃんかと額を押さえたあきらであった。