Skip to content

アニマルセラピー大作戦/tkrb(五虎退、鶴丸国永)

おおっ五虎退、たいへんだたいへんなんだと、鶴丸国永は繰り返した。びっくりして動きを止めた五虎退の腕を掴み、強引に引っ張って廊下を走る。とてとてと一生懸命虎がついてくるのを振り返って気にしながら、たどり着いたのはこの本丸の主の部屋だった。

「主様がお呼びでしたか……?」
「うん、ああいや。いいから入れ」

言って断りもなく障子を開けてしまった。ずかずか中へ入っていく。無礼じゃないかと躊躇って、中に入れなかった五虎退だが、鶴丸にどうしたはやく来いと言われてやっと足を踏み入れた。
そこには。

「え……?」

この本丸の主である審神者が、ばったりとうつ伏せに倒れていた。

「あ、主様っ」

思わず駆け寄って、頭の傍にしゃがむ。少し横を向いたその顔は、いつもの柔らかな表情とは違って色がない。手をかざすと息はしている、寝ているのだろうか。こんなところで?
どちらにしろはやく誰かを呼ばないと。年かさである鶴丸を見上げると、彼はわざとらしいまでの困り顔をして腕を組んでいる。

「困ったことになった」
「鶴丸さん、主様は一体……」
「……さっきまで俺と話していたんだがなあ、急に倒れてしまった」
「えっ!」

やっぱり誰か呼びに行かなきゃ!と跳ねるように立ち上がった五虎退を、なぜか待て待てと引き留める。

「これはなー、病ではないと思うんだ」
「じゃ、じゃあ」
「前に主と話したことがあるんだが。俺たちが戦闘で消耗しているように、主もこの本丸にいることでどうやら消耗しているらしいんだな」

ほら、現にこの空間自体主の霊力で維持しているようなものだろう。と鶴丸が言った。

「その消耗が限界を迎えると、こう、ぱったりと」

今のように。
と、未だ、ぴくりとも動かない主に目をやって続ける。
開きっぱなしの障子の隙間から、やっと追いついた子虎たちがころころと入ってきた。主人のそばに寄ってくる虎たちにも目をやらず、五虎退が真っ青になっている。鶴丸が苦笑した。

「そう深刻になるな。俺はその時主に対処法も聞いていてな。だから君を連れてきた」
「僕になにかできるんですかっ……?」
「できるとも。いや、実際は君の虎だが」
「虎くん」
「なあに簡単さ。俺たちは主によく手入れで打ち粉をかけられるだろう?」

にっこり笑って鶴丸が言う。確かに、ぽんぽんと少し堅いあの白いもので本体を叩かれたり撫でられたりする。

「ああいう感じで、なにかもふもふしたものをポンポン押しつけてやるといい」
「もふもふ……」
「虎とか、狐とか、毛並みのいいやつをな」

五虎退はそこで初めて、足のあたりにじゃれていた、自分の虎に目をやった。大きなリボンを首元につけた子虎と目があう。……もふもふしている。
ぎゃう、と鳴いた。

「虎くん……!!」

腕を伸ばして一番近くにいた子虎を捕まえた。そのまま倒れている主の、顔のあたりに背中を押しつける。
泣きそうになりながらポンポンと当てたり離したりを繰り返していると、なにかの遊びだと思ったのか、他の子虎たちが続々と主の周りに集まりだした。体をよじ登ってみたり、手の辺りをぺろりとなめてみたり、各々まとわりついている。

「おっ!いいぞ五虎退!」
「ほ、ほんとですかっ……!」
「ああ、見ろ。主の顔がにやけてきている。その調子だ」
「主様あっ」

見れば主の顔が先ほどより少し安らいで、手がびくりと跳ねた。
必死で作業を続ける五虎退を、いきなりばあっと起きあがった主が抱き込むまで、あとしばらく。