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黒トリ争奪戦/出水/男主

※ちょろいの続き

 

前方には風刃を持った迅が立ってこちらを見据えていて、その横に嵐山が立っていた。それから時枝に木虎。たぶんここから見えないところに佐鳥がいる。
なんっか足りねえよなあ、と思って出水はふと横を見る。

「……なんだよ」
「いや。智さん、あっち行かなくていいんすか」

智は迅と仲がいい。嵐山もあわせて、個人的に遊びに行ったり話をしたりといった光景をよく見る。
黒トリガー強奪の任務を直属の上官である城戸からうけたとは言っても、智の性格なら今この場で向こうについてもまったく不思議ではない。むしろ出水の知る智ならそうするだろうと思った。
だって、この任務を受けた時ですら智は不満げで、仏頂面で作戦を聞いていて、俺やる気ねーから期待しないでよと風間に言って頬をつねられていたのだから。

「いかねーよ」

智が吐き捨てるように言う。その手は弧月の柄にかけられている。やる気があるのが不思議だった。小声でなんでと聞けば眉を吊り上げた。

「……俺は何にも聞いてない」

智は強い眼差しを、おそらく迅に向けていた。目があったのか口端だけ持ち上げて、迅が困ったような顔をした。暗闇の中で浮かぶそれを出水は見る。

「いいか出水。物事にはいろんなやり方がある。あいつが何にも言わないってことは、つまり、成り行きに任せろってことだ」
「成り行き?」
「そう」
「どういうことすか」
「……この場合は」
 

俺に、全力で戦ってくれってこと。
 

言葉が落ちたその時、出水の上司である太刀川が楽しげに弧月を抜いた。それに続くように、智が柄を掴んで刃を引き抜く。淡い光が鞘から漏れ出す。

「……ふーん」

あまり納得いかずに首を傾げた出水が、なるほどこういう場合もあんのかと悟るのは、全部終わったその後の話である。