「てめえ何してんだ!!!」
基地の壁をぶち抜いた自分の後輩を見て智は腹を抱えて笑っていた。その横っ面を張り飛ばして荒船が怒鳴る。
こうなることがわかっていて、いや、こうさせようと思って、智はわざわざさっきアイビスを今ごめんなさいと泣きそうな声で言った後輩に渡したに違いないのだ。
しかし荒船がいくら怒っても、トリオン体同士ではほとんどダメージがない。ろくでなしの先輩は平気な顔で、後輩に向かって「よくやった千佳!」と親指を立てていた。馬鹿だ。馬鹿である。
「なんだよー。いいじゃん、カベくらいすぐ直るし」
「直すのもただじゃねーだろうが!」
胸ぐらをつかみ、揺すりながら言うと智の向こうに見える小さな肩がびくりと跳ねた。あああ違う。そこのチビは何も悪くない。うまくいかない。
とうとう土下座まで始めてしまった。小さい女子にそういうことをされると心が痛む。佐鳥は慌てているし、東だって……東は慌てていないか。佐鳥をからかう余裕があった。
「あのな」
その光景を横目で見ながら、智が小声で囁きかけてくる。見るからにふざけていたさっきまでとは、顔つきが違っていた。荒船が片眉を吊り上げた。
「……俺だって無駄なことはしねえよ。これは必要なことだ。たぶん。迅さん談」
「……ああ?」
詳しく話せと言ってみたがいや俺だって知りてーよ、と返ってくる。
「あの人なんでもちょっとしか教えてくんねーもん。今日も俺は付き添い行ってって言われただけ。そんで面白そうな方向に動いただけだ。そうすんのも計算のうちだろ」
「……結局お前の趣味じゃねーか」
「えへ」
「そんなちょっとでこんな騒ぎ起こしてんじゃねえ」
ハン、と智が鼻で笑う。
「……そのちょっとを信じて動くのが、仲間だろ」
口元だけきゅっと吊り上げる、気障ったらしい笑い方を智はした。いいこと言ったみたいな顔しやがって腹が立ったのでバシッともう一度頭を叩く。なんだこれは!という声がすぐ後ろで聞こえた。