「武富はヘンタイなのか?」
「うえっっ!?」
いきなりうら若き乙女をヘンタイ呼ばわりとはなんたる狼藉かっ!と自信を持って怒鳴れたらよかったのだが、なにせ武富にはそう謗られても仕方ないというような後ろぐらい趣味がある。
飲んでいたジュースを吹き出して咳込んだ。智は男のわりに大きな目をぱちぱちと瞬かせて、背中をさすってくれる。が、むせている時にそういうことをされると、なんだか恥ずかしい。ヘンタイの方も含めて、できれば放っておいてほしい。
大丈夫です大丈夫ですと言いたくなるけれど喉は咳でいっぱいでそんな余裕がない。
「なあ」
優しい手つきで武富の背を撫でる智は、心配しているのかいないのか、表情も特に変えずに言った。変な人なのである。ヘンタイと言っておいて、その意味を理解しているのかどうかさえ実を言うと怪しい。
苦しくて涙ぐんだ目を、武富は智に向けた。感情の表れない口元がうっすらと開く。
「……おれの声には、興味がないの」
いや違います私は声フェチなどではなく解説フェチなのです。
たぶん訂正すべきところなのだが、咳は止まらないわ心なし寂しげな響きにちょっとときめくわでやりようがない。
少し時間をくださいと手のひらを掲げてみたら、何を思ったのか首を傾げた智に同じく手のひらを重ねられて、ぱち、とちいさな音が鳴った。
意味がわからない。ときめいた。意味がわからない。