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緑間とこたつ/krbs

人間は冬の寒さに逆らうことはできない。だってそうだ、寒すぎる空気に晒されるだけで、死んでしまうのが人間なのだ。だから工夫を凝らして古来より防寒の努力を重ねてきた。その集大成がこの炬燵である。つまり人間は、人間である限り炬燵の心地よさに逆らえない。

「真太郎、これ捨てて」

もちろん私も人間の端くれであるため、これを導入したその日から炬燵の虜と化している。トイレに学校バイト、どうしてもと言える用事がない限りは一切外に出ない。床暖房なんて気の利いた物があるような家ではないし、エアコンは個人的に好きではないので滅多に使わない。炬燵に取り付かれた人間は私一人ではもちろんなく、向かいにはもう一人、でかい図体を小さく畳んで炬燵に入り込んでいる人間がいた。真太郎だ。私より虜レベルは低そうに見えるが、やるべき事以外では外に出ないという点は私と同じだ。
私はその彼にみかんの皮を差し出すと、嫌そうな顔は無視して手拍子で茶化した。みどりまくんのーちょっといいとこみてみたいー。

「寒いのだよ」
「投げればいいじゃん」

部屋のはしにあるゴミ箱を指さす。君はいったい自分を何だと思っているのだ。キセキの世代が誇る天才シューター、緑間真太郎ではないのか。

「コントロールいいって便利だよね。炬燵から出ずにゴミが捨てられるなんて」
「俺のシュートはこんなことに使うためのものではないのだよ……」

言いながらもみかんの皮を手のひらの上で弄び、感触を確かめている。これはやってくれるなと思ってじっと様子を見守っていると、真太郎は動きをやめ、意を決したように息を吐いて、スッと立ち上がった。
部屋の隅まで歩くとみかんの皮を捨て、ゴミ箱を手に炬燵まで戻ってくる。

「えーそれはないわー」
「うるさい。俺は外れるシュートは打たん」
「やってみなきゃわかんないじゃん!真太郎の馬鹿!いくじなし!」

私の暴言をさらりと聞き流し、何事もなかったように元の位置に戻って、真太郎は新しいみかんの皮を剥き始めた。ゴミ箱は近くにあるから、これでまた一つ私たちは炬燵から出る理由を無くしたことになる。