火神の作るご飯はおいしいし、私は料理が面倒くさくて好きじゃないから、ついことあるごとに火神家を訪ねてしまう。食費がどうのとぶつぶつ言われるし、皿洗いとかその分労働を課されるから、賓客とは言えないが、なんだかんだそんなに嫌がられてはいないと思う。火神は一人が嫌いだ。ぼっち飯とかきっと耐えられないタイプにちがいない。
この間ちらりとえのきの入った味噌汁が飲みたいなあと呟いたら、一週間くらい経って、テーブルにそれが乗るようになった。私がわあいと喜ぶ様をおおげさなんだよと言って、火神は照れたように笑った。
些細なことを覚えていてくれたのが嬉しかった。だってそれって、私を喜ばせたくてやったことなんでしょう。
「うふふ」
「なんだよ、気持ち悪ィ」
「なんでもないよ」
「ったく。ほら、さっさと食器持ってけ」
「はーい」
今日も食卓にはえのきの味噌汁が並ぶ。一度喜んだことを、バカのひとつ覚えみたいに延々と繰り返す、火神のへたくそな優しさが愛しかった。
何をすれば私が喜ぶのかわからない。でも喜ばせたいと、思っていてくれている。
「火神のご飯、今日もおいしい」
「当たり前だろ。オレが作ったんだから」
だから私は今日も、とびきりの笑顔でそれに応えるのだ。