今日は非番だという王子と、二人並んで歩いて帰っていた。
あきらはボーダー隊員ではないから、こうして二人でゆっくり帰れる日は貴重だ。ちょっと寄り道して帰ろうか、なんて言われてはさらに舞い上がってしまう。
つんざくようなブザーの音が、辺り一杯に響いたのは、ちょうど人気のない公園に差し掛かった時だった。
「えっ、な、なに」
「……」
きょろきょろ辺りを見渡す間にも警告音は鳴り止まず、機械のような女の声がゲートが発生したとかなんとか恐ろしいことを言っている。
「……あきら、下がって」
「え」
振り向いたところには、見慣れない格好をした王子が立っていた。制服はどうしたんだろう。
不安を煽る警告音をものともせず、にっこりと、いつものように笑う。
その背後に黒い穴がぽっかり開いた。
「一緒に帰っていてよかった」
「王子、いくらボーダーでも、一人じゃ……」
「大丈夫」
王子が手を少し動かすと、何もないところから持ち手が生まれ、やがて立派な刀が現れる。
ボーダーの武器、トリガー、あれがきっとそうなのだ。
その間にも穴は広がって、やがて白い異形が姿を現す。
一匹、二匹、三匹。
何年も前に、嫌というほど見たもの。怖くて怖くて、仕方なかったもの。
警告音が鳴っている、女性の声が逃げろ逃げろと警告する。目の前には昔の恐怖そのもの。
なのに。
「あきらはぼくが守るよ」
王子は笑って、刀をすらりとあげる。異形が蠢く後ろを振り向く。
あきらは何も怖くなかった。