「七海ー、七海も教師やりなよー」
一般教養のテストに丸をつけながらあきらが呼びかけてくる。聞こえなかったふりをして報告書を読んでいると、「七海ー、無視すんなー」と更に言葉が続いた。
七海の一つ上の学年は教師が多い。人数が少ないこともあるが、五条にあきらと、四人のうち二人がなっているのだから割合としては半分だ。二人とも七海にとっては厄介な部類の先輩であり、隙あらば同じ道に自分を引きずり込もうとしてくるので、困ったものである。
「七海ー、七海のようなしっかりした人間には、教師向いてるって私は思うなー」
「……」
「一度呪術師辞めたって経歴もさー、なかなかイイと思うんだよねー。術師の他に選択肢があるってわかってない子も多いしさー」
「……雑用させたいだけでしょう」
「バレたか」
あはは、と一人で笑って、あきらは引き続き赤ペンを走らせている。「まあ別にならなくてもいいんだけどさー」とまだ続けるつもりのようだ。
「なんかあったときは助けてあげてね、七海ー」
そんなことは言われなくてもわかっている。はあと溜息を吐くと、何が面白いのか、あきらはまたうふふと笑っていた。