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反転術式について/乙骨

出かけた先で怪我を負った。血はそこそこ出ているが、そこまで酷いものでもないので高専に帰れば硝子がなんとかしてくれるだろうから心配ない。目的の呪霊は祓ったし、あとは五条に押しつけられた学生を回収して──と考えていたところに、任せた呪霊を祓い終えたらしい学生本人が走り寄ってきた。
腕を伝ってぼとぼとと地に落ちる血痕を見て顔色を変えると、乙骨憂太という名の少年はあきらに向かって唐突に手を翳した。

「は?」

呪力に包まれたと思った次の瞬間にはもう痛みはなかった。マジで?と思って袖を捲り上げてみても、傷跡さえ見あたらない。

「……ありがとう。反転術式だよね?」
「はい。僕もなんだか使えるみたいで」
「……」

僕もじゃないんだよな。
反転術式は誰にでも使えるようなものでは全然全くない。五条でさえ自分の体を治せるだけで他人の怪我は無理なのだ。
自分の力の希少性をいまいちわかっていない乙骨は、黙ったままのあきらを見て不思議そうな顔をしている。
おい教師、基本知識も教えないのに何が先生だ返上しろ、とどこかのバカ目隠しに悪態を吐いた。

「……反転術式が使えることはあまりおおっぴらにしない方がいい。他人の治療ができるならなおさらだよ。普通はできないことだから」
「そうなんですか?」
「うん」

幸い乙骨は自分でもしっかり戦えるようなので、バレてもそう変なことにはならないだろうが、用心はしておくべきだ。

どこかの誰かの不自由が頭を過ぎる。もう治して貰う必要もないけど、今日は会いに行こうと思った。