お姉ちゃんがいないのと、真依は泣きそうな顔をして言った。
「へ?」
あきらが間抜けに問い返すと、着物の袖を掴んであきらを見上げる真依の目がみるみるうちに潤んでいく。
終いには嗚咽がこぼれだしたので、あきらは慌ててその小さな体を抱き上げて、よしよしと背中を叩いてやった。真依が必死に訴える。
「お、お姉ちゃん、どこにも、」
「うんうん。私も探してあげるから」
困ったあきらが優しく言うと、真依はこくこくと一生懸命頷く。
放りだして行くのもどうかと思ったので、そのまま背中をぽんぽんと叩いていたらどうも寝かしつけているような格好になり、そのうち真依は眠ってしまった。
疲れていたのだと思う。
子供の足で結構色々探し回ったのか、真依の足は泥で汚れていた。
すうすうと寝息を立てる真依を部屋に連れていってから、あきらは真希探しを始めた。
仕事は少し残っていたが、今はこちらが優先だろう。特にやりたくもない仕事が適当になるのはいつものことだし、それを怒られるのにも慣れているから、どうということはない。
「真希ー!」
どこをすでに探したのか真依に聞くのを忘れていたので、まずは名前を呼びながら屋敷内を歩き回ってみる。
しかし目的の子供は見当たらない。
やっぱりおかしかった。
真希は耳がいい。あきらが呼ぶのが聞こえたならば、なんだよとひょっこり顔くらい出すはずだ。
そもそも甘えたの真依をそう長い間一人にすることはないし、するならするでちゃんと言うだろう。あきらに預けたりもするかもしれない。
そうして、屋敷内を練り歩くあきらの眉間に皺が寄り始めた頃だった。
子供の高い笑い声が耳に入って、あきらは足を止めた。
きゃはは、と翳りも何もない、自信に満ちた声だ。
この家の術式を受け継ぐ子供たちは、大抵こんな笑い方をする。
まるで自分が世界の中心にいるかのような。
「…………」
あきらは一応足音を消し、声のする方へと忍び寄った。
**
敷地の端も端、使用人でさえ滅多に立ち入らない倉を前にして、あきらは小さくため息を吐く。
倉と言えば聞こえはいいが、ただの物置である。大事なものなんて何も納められていないそこに、呪力の気配が残っている。
閂を取り外し、扉を開ければ中は真っ黒だった。真っ暗ではなく、真っ黒。
「チッ」
眉間に皺を刻んで、あきらは苛立ちとともに練り上げた呪力をぶつけた。風船が割れるように、不格好な帳は解けて、やっと中の様子が見える。
薄暗い中、土の壁を背にして、うずくまる小さな体を見つけた。
「……真希」
帳は簡単な術式だ。教えてもらいさえすれば、呪力がある人間なら子供だって下ろすことができるだろう。
その分大したことができないものでもあるけれど――
「寝てる?」
――真希は出られない。
呪力がないから。
声を掛けながらそばに行く。真希はぴくりとも動かない。
寝ているのなら、このまま起こさないように連れて行って、真依の隣に寝かせようとあきらは思った。
けれども。
ぴくり、と真希の手が動いた。
「あ、起きてたか。真依が心配して……」
ゆっくりと真希が顔を上げる。
驚いたあきらが言葉をなくして固まっている間に、真希はあきらのお腹にしがみついた。
そのままぎゅうぎゅうと苦しいくらいに締め付けられ、あきらはうえと情けない声を出す。いつもなら続く文句も、今はさっぱり言う気になれない。
「…………よく頑張った」
ひっく、と応えるように漏れ出た嗚咽を聞いて、あきらは小さな体を抱き上げる。さっき真依にしたのと同じように、小さく震える背中を、ゆっくりと撫でてやった。
真希だって泣く