明日から二日、家の用事で田舎に帰ることになっている。
先生には受けられないテストがわりの課題プリントを貰ってきたし、まだ残っていた友達との雑談も一区切りついた。
ごそごそ帰りの支度をしていたあきらに、そぉっと近づく者がある。
天内理子。
同い年だが小柄さもあいまって、妹のような友達だ。
「あきらちゃん、明日はお休みだよね」
うん、と頷くと、理子は一瞬だけ寂しそうな顔をした。
けれどすぐに笑顔で取り繕って、あきらにハイと手を差し出す。
やわらかそうな小さな手の上には、いつも授業中にこっそりやり取りしているものと同じように折り込まれたかわいいメモが乗っていた。
理子お気に入りの、ちょっとゆるめのキャラクターが描かれたメモだ。
なんで今、と不思議に思いながら、あきらはそれを受け取った。
「家で開けてね」
「えぇ?」
「ぜったい、絶対だからね!」
「わかったわかった」
常ならぬ剣幕に小さくため息をつきつつ、仕方ないなーとあきらは頷く。安心したような理子の小さな頭をいつものように撫でたら、えへへと嬉しそうに受け入れた。
「あきらちゃん、元気でね」
「何それ」
あきらがプッと吹き出した。まるで引越しでもするみたいだ。いつもの天然ボケかもしれない。
理子は少しずれているところがあるし、そういうところがみんなから可愛がられている女子だった。
三日後にはまた会えるよ、とあきらが笑うと、理子は少し言葉を探した後、そうだねと笑い返した。
家に帰った後開けた手紙には、『あきらちゃん、いつもありがとう。大好き』と短くそんなことが書かれていて、あきらは首を傾げた。
そんなことは知っているし、知っていることを知られているとも思っていた。
なにかあったのかな、と思いながら、自分も机の引き出しからお気に入りのメモ帳を取り出して、一枚を丁寧に千切る。
『いきなりどうしたの。笑 私も大好きだよー』
それだけ書いて、貰った手紙と同じように丁寧に折った。忘れないように筆箱に入れて、学校の鞄に仕舞う。
理子からの手紙は、綺麗に折り直して、机に置いてあったぬいぐるみに持たせた。
いい感じだ。二年に上がったばかりの頃に、お揃いで買ったクマは、嬉しい手紙を大事そうに抱えている。
「……ふふ」
理子へのお土産は他のみんなよりも奮発しよう。
何にするか考えながら、あきらはくすくす笑って、ぬいぐるみの顔をちょんとつついた。