※学生時代
「戻らなかったらどうしよう……」
半泣きのあきらが硝子に向かって言った。
その丸い頭には、髪と同じ色の毛が生えた、犬や猫のような耳がぴょこんと突き出て、今はしゅんと垂れている。
実習で奇妙な呪霊に呪いを受けた結果なのだそうだ。
そっちの相手をしていたのは五条だったのだが、たまたまその断末魔のような攻撃に当たったのが少し離れて他の呪霊の相手をしていたあきらだったとのことだった。
「あきらがどんくさいのが悪い」
「…………」
原因の一端は、睨まれてもなんのその、平然とあきらをバカにしている。さっきから耳を触って遊んでは怒られているが、やめようともしない。
一応これでも心配しているのだろうと硝子は思う。
戻ってきてすぐあきらを引っ張って医務室に直行したと聞いたし、まあ大丈夫だろう、というお墨付きをもらって教室に帰ってきてからも近くを離れようとはしなかった。
その青い瞳に異変の一つでも捉えれば、そのままあきらを抱えて医務室に駆け込むような雰囲気がある。
「……大丈夫だって言われたんでしょ」
頬杖をつきながら言ってやると、あきらが言われたけどさあとまた泣きそうな声を出して応えた。
「じゃあ信じなよ」
「信じてるよ、信じてるけど万が一があるでしょ」
こんなのじゃ外に出れないと嘆くあきらに、帽子とか被ればいいじゃんと耳を摘みながら五条が言った。それを振り払い、また摘み、と攻防を繰り返す二人を見ながら、硝子がふと思いついたままに口を開く。
「もし治らなかったら」
「え?」
「なんか方法あんの?」
「いや」
硝子の発言に希望を見たのか、ぴょこんと元気を取り戻した耳を見て、少し間を置いた。もう一度口を開く。
「……戻らなかったら、私が切除してあげる」
「ひえっ」
「怖っ」
好き勝手な反応を返す同級生二人に、硝子は腕は確かだぞと胸を張ってやった。