そりゃああきらだって人間なので、つらいこともへこむこともある。廊下で後輩に声をかけられたって、ごめん、明日にしてと言ってしまう日もあるわけだ。
電気もついていない部屋に籠もって布団を被り、壁を背にして体育座りをして、ぼうっと考えるべきことを考えた。
はー、と大きくため息をついたところで知った気配を捉える。布団から顔を出すと、そこには先ほど無碍にしてしまった後輩の式神が二匹。玉犬と言ったか。黒い方は利口に床でおすわりをしているが、白い方は鼻先で器用にペットボトルを転がしている。
「……ジュースだ」
あきらのよく飲んでいるやつだ。品揃えの悪い高専内の自販機には売っていないから、外のコンビニまでわざわざ出かけたのかもしれない。
のそのそとベッドの端に行くと、慰めるように二匹が寄ってきて、手触りのいい毛皮をあきらの手にすり寄せてきた。応えるように撫でながら、小さく笑う。
「優しいねえ」
玉犬たちを褒めるように撫でてやりながら、ここにはいない後輩の姿を思い浮かべた。全くいい後輩だ。
明日になったらいつものように、鬱陶しいと言われるくらい元気な声で挨拶をしてやろう。