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虎杖を誘う

※ごく自然に順平がいる

ドンッと何かに突き飛ばされるように、あきらは現れた。なんとかこけずに持ち直して、後ろを睨むがそこに誰がいるのか、順平と悠仁のいる位置からではわからない。

「高遠さん、どうしたの」

と順平が声をかけると、あきらはごまかすように何でもないと微笑んだ。それから、視線を手元に落とし、指で遊びながら口をもごもごとさせている。
何か悩んでいる様子のあきらに、順平と悠仁は話を中断して顔を見合わせた。
ただし迷っている期間はそう長くなく、よし、と吹っ切れた様子のあきらが、勢いよく顔を上げる。
挑むように見られたのは悠仁だった。

「あ、あのさあ、虎杖、明日暇?」
「え? 用はないけど」

なんで?と悠仁が首を傾げる。
この時点でなんとなく順平はあきらが何に迷っていたのかを察した。年齢的には一つ年下のあきらの青春に、へえ、と感心したような気持ちが芽生えた。

「映画とか、行かない?」

一人じゃ恥ずかしいから、と、一人で行くよりもよっぽど勇気がいるだろうことに今まさに取り組んでいるあきらが、しどろもどろになりながら言った。虎杖の反応を上目遣いで窺う。続けて出された映画のタイトルが、この間公開されたばかりで、しかも評判がいいものだったので順平もちょっと興味が沸いた。
悠仁もそれは同じだったようで、明るい声でいいよ!と返事をする。そしてくるっと順平に笑顔を向けた。

「なっ、順平」
「えっ僕も!?」
「だって順平も観たいっつってたじゃん」
「そ、れはそうだけど」

困ってあきらに目を向けると、もっと困った顔のあきらが縋るように順平を見ていた。ここで同意してもあきらの邪魔をするだけだし、そんなことになったら近くで聞き耳を立てているだろう釘崎に何を言われるかわからない。

「……僕はいいよ。明日は用事があるから」

苦笑して言うと、あからさまにあきらの顔が輝いた。眉尻を下げてそう?と悠仁が言う。

「また感想聞かせてね」

オッケー!と笑顔で頷く悠仁と、順平を拝むようにしているあきらの姿は微笑ましい。うまくいくといいね、とこっそりあきらに笑いかける。

この時の順平は、明日釘崎に叩き起こされることも、伏黒と共に釘崎に引っ張られて二人の後を追いかけ、同じ映画を観に行くことになることも、まだ全然知らなかった。