星だあ!と空を見上げたあきらが興奮気味に言った。
「そうね星ね」
「冷たい!」
「暗ければどこでも見れるわよ」
野薔薇がため息を吐くと、あきらがええ~と語尾を下げる。
泊まりがけの実習なのはいいけれど、どうしてわざわざ夜中にこんな山の中を出歩かないといけないんだと野薔薇はさっきからイライラしている。はやく終わらせて寝るわよ肌に悪いでしょとせっついても、あきらはのんびりして、歩調もほとんど変わらなかった。
おまけに星なんて言い出した。こんなもの、青森のド田舎で生まれ育った釘崎にとっては、ただの田舎の象徴で、何もないことの証明みたいなものだ。
「野薔薇は嫌いなの、星」
「……別に。夜景の方が好きよ」
夜景は人々の営みの証拠だ。
輝きが強ければ強いほど、野薔薇がずっとほしかったものや好きなものがたくさんあるに違いないと思っていた。そしてそれはきっと正解なのだ。
短い返答にふうんとあきらは頷いて、また空を見上げた。
「あっ、野薔薇、流れ星!」
勢いにつられて、あきらの指の先を見る。
「……何もないじゃない」
「見るのが遅いから!もー」
「何がもーなのよ」
――そういえば沙織ちゃんも、星が好きって言ってたっけ。
空を見上げてしまったせいか、あきらが隣にいるせいか、遠い昔の夏の夜を、野薔薇はふと思い出した。