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真希はかわいい

庭に突っ立っている少女の姿を見て、あきらは首を傾げた。
双子といえども性格は違い、それが立ち振る舞いに現れているので、二人を見分けるのは容易い。あれは真希だ。
この間当主様からいただいたという微妙にサイズの合わない眼鏡をかけて、真希は庭の一点を見ている。手に持った鞠で遊ぶことも忘れているようだ。

「真希、どうしたの」
「っ!」

声をかけると、ばっとこちらを向いて目を見開いた。相手があきらだとわかってほっとしたのか、「なんだあきらか」と失礼なことを言う。

「……アレ」
「んー?」

真希につられるように、あきらも視線を向ける。
遠くの塀のそば、木の陰になっているあたりに、異形の姿があった。

「あー」

禪院の家は、対呪術師用の守りは強いが呪霊に対してはいまいち甘い。家の人間は基本的に呪術を扱えるし、万が一襲われて怪我をしたところで、弱者と蔑まれるだけだ。だから時々こんな風に、敷地内にも呪いが入り込む。

「こっちを見てる」

見た感じ低級だが、最近呪具を手に入れたばかりの真希は呪いを見慣れていないから、気味が悪いのだろう。目は逸らさないまま、あきらの着物の端をぎゅっと掴んだ。

「んん。わかった、待ってな」

頬をかいて、あきらは呪霊のいる方向に歩き出した。背中に真希の視線を感じる。

自前の術式で呪いを焼き払い、真希のもとに戻ってくると、真希は息を吐いた。そして拗ねたような顔をする。

「もういないよ」
「見りゃわかる」

あきらはくつくつと喉の奥で笑い、「怖くないんじゃなかったの」と問いかけた。

「……今は見えてるだろ」
「はは。そうだねえ」

真希がかわいくて、あきらはその小さな頭に手を乗せ、がしがしと撫でてやった。

「あーもー、……おいあきら」
「うん?」
「真依には言うなよ」

今の呪霊のこと、と小さく呟く。

「んふふ、言わないって」

弱みを人に見せられないのもまた、弱さのひとつにちがいない。
強がる妹分の頭をもうひとつ余計に撫でると、がっと足を蹴られた。痛い。