※学生時代
「今日、初恋の日なんだって」
少し遠くではあきらの式神が群になって呪霊どもを追いかけている。とうの昔に命令は下しているからやることがなくて、暇が過ぎたあきらは唐突に口を開いた。
つまらなさそうに携帯をいじっていた五条がちらりとあきらに視線を遣る。
「へえ」
どうもこの同級生には嫌われている気がする。まあ、今日はこんなつまらない任務に駆り出されているし、結局あきら一人で手は足りているから暴れることもできないしで、元々機嫌がよろしくないのだ。
だがそれが何だという話だ。あきらはのんびりと、暇潰しのための会話を続けた。
「初恋ってさあ」
「続けんのかよ」
「実らないって言うよねえ」
「……」
呆れたように見られたが気にしない。
「五条はどうだった?」
首を傾げ、横に立つ五条の顔を見上げる。不機嫌な顔をした五条が、ふいとそっぽを向いた。
「知るか」
「これくらい答えてくれたっていいのに。ケチ」
ハァと大きくため息を吐くと、五条がムッとして黙り込む。
答える様子がない同級生のことを早々に諦めて、あきらは正面に視線を戻す。呪霊の肉を食いちぎる式神の様子を眺めつつ、帰る前にコンビニに寄ってお菓子が買いたいとか、そういうどうでもいいことを考えた。
「……まだわかんねえよ」
「ん?」
隣から五条の声が聞こえて、驚いて振り向く。綺麗な青色の目が、サングラスの奥からあきらの方を見つめていた。
「初恋。まだ終わったわけじゃないし」
「……」
あきらは口を抑え、ブフッと吹き出した。続けてケラケラ笑い声を上げたのを、何がおかしいんだよと五条が怒った。それもまた面白くて、あきらの笑いに拍車がかかる。
「高遠!」
「ごっ、ごめん、なんか、」
かわいくて。
苦し紛れの言い訳に面食らったらしい五条の顔がおかしくて、あきらはまた笑い出した。