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五条にやり返す

いつもキスをしながら、大人しく後ろに倒されてしまうから駄目なのだ。自分よりずっと大きな体に上から覆い被さられてしまえば、抵抗は難しいし、そのうち諦めてされるがままになってしまう。
五条との行為が嫌いなわけではないが、いいようにされっぱなしなのはやっぱり悔しい。気持ちよくなってひっきりなしに喘ぐあきらを見て、満足げに笑っている五条の顔は好きだけれど、たまには自分のペースというものに持って行きたいし、余裕のない顔なんていうのもさせてみたい。
というわけで。

「待った」

口と口を合わせ、いつものように舌が慣れた様子で滑り込み、あきらの薄い肩に五条がやんわりと力を入れる。まだ抵抗のできるその段階で、あきらは五条の肩をぐっと押した。思ったより簡単に離れた五条はあきらの拒絶に一瞬驚いた顔をして、それからむっとあきらを見た。「なんで」と不満を隠さない五条が問いつめる。
あきらはひとつ咳払いをした。

「きょ、今日は私がやる」

五条がぽかんと口を開ける。
間抜けだ。しかしそれは一瞬のことで、すぐに面白そうに口の端を吊り上げた。にやにやと笑いながら「へえ?」と語尾を上げる。完全になめられていることに気づき、今度はあきらがむっとした。

「あきらが?できんの?」
「できます」
「いっつもあんなに気持ちよさそうにしてんのに?」
「はあ!?それ、か、関係ある……!?」
「あるだろ。やり方とかわかんの?」

何やるつもりか知らないけどさ、とまた馬鹿にしたような笑い方をされて、あきらがぐっと拳を握った。
既にさっきまでの、なんというか甘い雰囲気は消え去っている。ここから行動を起こして元の空気に持って行くのは勇気がいった。けれど女は度胸だ。あきらだってちゃんと、いろいろ勉強してきたのだ。ひえーと思いながらネットの動画やら記事やらを見た、あの時間と努力を無駄にしたくはない。

「いいから、こっち来て」

五条の腕を引っ張る。少し移動させて、ベッドの縁に腰掛けるように誘導した。五条がお手並み拝見とばかりににやついているのを無視して、あきらは床のカーペットの上にぺたんと座る。
五条の反応を待たずにスウェットに手をかけ、引っ張って下ろした。五条が手助けするように腰を浮かせる。黒のボクサー。その下にある膨らみを見て、ちょっと手が止まった。

「やっぱ無理だろ?」
「……そんなことないし」

勝ち誇ったように言われるから余計にムキになる。勢いで下着の端に手をかけ、それも下ろしてしまうと、少し芯を持ちかけた五条のものが露わになって、あきらはびくりと肩を震わせた。
五条のものをこんなにしっかりと見たのは初めてだ。たまに最中に触ってと言われることもあるし、おそるおそる触れたりもするが、あきらはいつもほとんど何もしていない。上から包まれる五条の手が望むように、びくびくとしているそれを擦るくらいだ。これのことを嫌と言うほど覚えて、馴染んでいるのはあきらの胎であって、あきら自身ではなかった。
ふっ、と笑いがあきらのつむじのあたりに落ちる。
無理すんなよと機嫌の良さを取り戻した五条が言うのを無視して、恐る恐るそれに触れた。
まじまじと見つめてみる。他の男性のものを知らないから、五条のこれがどういった評価を受けるようなものなのかあきらにはわからないが、随分グロテスクではあるなと色気のないことを思った。

「……ん、」

てらてらと先端から液体が漏れている。そこに親指を押しつけるように触れ、握ってみると五条が息を吐いた。すこし、気持ちがよさそうだ。ちらりと表情を盗み見ると、はっとまだまだ余裕がありそうに笑ってみせる。

「い、痛くない?」
「ねーよ。じれったいけど」
「じれったい……」
「ん。もうちょい力入れて」
「こ、こう?」

言われたとおり少しだけ力を入れて、上下にぎこちなく擦ってみる。あ、と声が五条の口から漏れた。背を丸めたせいであきらの上に影が落ちる。
五条の頬が運動をした後のように上気していて、よかった、とあきらは思った。どうやら気持ちいいらしい。触られていないはずなのに、あきらも段々と興奮してきた。じゅんと下着が湿る感覚があって恥ずかしい。

五条もひょっとして、いつもこんな気持ちだったのかなと思った。
もっと気持ちよくしてあげたいとか。
自分にできることなら、なんでもやってあげたいような、この感覚。

だからそれに顔を近づけたのは、あきらにとっては当然の行動だった。

「は……!?」

先端にキスをする。唇に液体が着いた。舌を出してぺろりと舐めてみると、苦みが広がって少し眉を顰めた。けれどやらない理由には何一つならなくて、あきらは口を大きく開けて、五条のものを口内に迎え入れる。女優さんはどうやっていたかとか、記事にどう書いてあったかとかはもうよく思い出せなくて、ただ歯が当たらないようにとそれだけ気をつけながら、粘膜と粘膜を擦り合わせる。
少しの間夢中になってびくびく脈打つ感覚を口内で楽しんでいると、「あきら」と焦った声で呼ばれた。

「お、オマエ何して……」
「はにっへ」
「喋んな!!」

怒られた。離せ、離れろと混乱した様子の五条に言われ、あきらは渋々五条のそれから口を離した。しっかり勃ち上がった性器と唇を繋いでいた糸がぷちんと切れる。名残惜しげにそれを見つめた。

「……やっぱ下手だった?」

少し沈んだ気持ちで尋ねると、ううとかああとかうめき声が返ってきた。不思議に思って、そこでやっと目線を上げると。

「え」

五条の顔は真っ赤だった。

「……え、何、どうしたの……」
「うるさい。あきらのバカ、あーもう交代、交代だからこっち来て」
「ええ?」
「もう無理!」

真っ赤な顔のまま五条はあきらの脇の下を掴み、ひょいと体を持ち上げる。あっという間にベッドに転がされて、キスをされた。

「……苦い」

そりゃあそうだろう。

不機嫌そうな五条は結局それからいつものようにあきらの体に触れてきたので、あきらはすぐにいいようにされるだけの女になった。心なしか手つきが性急で、表情に余裕がないように思う。すぐに弾けた一度目の後、二度目は随分ねちっこかった。

「……ああいうの、もうやんなよ」

終わった後に不貞腐れたように言われたけれど、なんだかんだ五条が興奮していたのはわかったので、あきらは意地でも頷かなかった。