五条はあきらよりも歩くのが速い。足の長さが根本から違うのだからそれも当然な話で、それでも一緒に連れ立って歩く時は、五条なりに速度を緩めて、あきらに合わせてくれていると思う。
けれどそんな気遣いは普通の時だけだ。機嫌が悪い時や考え事をしている時、五条は自分にとって自然な速度で歩くから、どんどんあきらの先を行く。
「……」
今日はおそらく後者だろう。朝に実家から連絡があったと言っていた、様子が変なのはそれからだ。
実習中からあまり集中力がなかった五条は、それでも危なげなく任務を終えた。帰り道も会話は少なく、筵山の麓にたどり着き、高専の敷地へ続く石段を二人で登り始めてしばらく経つ。スタートは同時だったのに、五条の背中はあきらよりずっと前にある。
「ま、いいか」
別に一緒に帰らないといけない決まりもないのだ。
階段だし疲れているし、あきらに追いつこうとする気力はなかったから、適当に自分のスピードで石段を登った。
少しして、前方でずいぶん小さくなった五条がふと足を止めた。
キョロキョロと左右を見て、何かを探している。
そしてはっとしたようにこちらを振り返ると、「あきらー!」と叫んだ。少し声を張り上げて、なーに、と応える。
「早く来い!晩飯!」
「疲れたから無理」
「はぁ!?」
変わらぬ速度で地道に階段を登るあきらに急ぐつもりは全くない。五条が眉を吊り上げて変な顔をした。
何を思ったのか、あきらの方に向かって階段を降りてくる。お互いの方へ向かっているのだから合流はすぐで、軽快な足取りで降りてきた五条はあきらのいるところより一段上で立ち止まると、ムスッとした顔で「歩くのおせーよ」と文句を言った。
「……一人で行けばよかったのに」
なんでだよ、と返されて、こっちのセリフだよ、と思った。