「寒い」
「うん」
「冬だな」
「冬だね」
「餅とうどんがうまい季節だ」
やけにまじめな顔で太刀川が言った。季節ってあんた年中食べてるじゃん、なんでちょっと自慢げなの、と思う。面倒だから口にはしなかった。
「……うどんはともかく、餅の前にもう一段階あるんじゃない」
「なんかあったっけ」
「ほら、ケーキとか、フライドチキンとか」
「あー」
そっちはあんまり興味ないからなあ。
恋人行事としては一年のうちで一二を争うくらいの重要イベントをそんな風に言われてしまえばため息も出た。
……まあ今年は遠征らしいし、いつ帰ってくるかもわからないし。
いちいちこんなことで腹を立てても仕方がない。
太刀川のそばにいたいと思うなら、多くは望まないこと、諦めをよくすることだ。前に加古と飲んだ時そんなことを言ったら、早いとこ別れなさいって言われたっけ。別れないけど。
「今日は鍋だな」
「二人で?」
「おう。シメはもちろんうどんだ」
「……雑炊がいい」
「意見が分かれたな。よし、ランク戦で決着つけるぞ。勝った方の希望が通る」
「…………太刀川ってさ、譲る気ないとき絶対ランク戦で決着って言い出すよね」
「だからどうした」
「……」
そう、太刀川のそばにいるのなら、諦めが肝心だ。
うどんも確かにおいしいからもういいや。あきらは大きく息を吐いて、C級のブースに向かって歩きだそうとする太刀川の服の端を引っ張った。