あきらさんは、と思い詰めた声で順平が尋ねたので、静かに言葉の行き着く先を待った。唇をきゅっと結び、また開いて、弱々しく順平が尋ねる。
「ひとを、殺したことがありますか?」
随分不躾な質問だと、本人は自覚しているようだ。
それでも聞かずにはいられないことだったのだと、長い前髪に隠れた右目が訴えている。あきらは「あるよ」と短く返した。
呪術師とは、そういう仕事だ。必要があれば、誰であろうとあきらは殺すし、この道を行くのなら、順平もいずれはそうならねばならない。
「……悪い呪術師を?」
「そうだね、そういうときもある」
「違うこともあるんですか?」
「ある。必要があれば、善人でも私は殺す」
順平は少しショックを受けたような顔をして、何かを考え込んでいる。
この子が望む答えなんて、あげられるのだろうか、とあきらは思った。けれど適当な取り繕い方なんて、不器用な彼女は知らなかった。
「……でも」
「……?」
「殺した相手のせいにはしない。私が正しいとも、思わないよ」
人が人を殺すのに正しさなんてありはしない。それが自分にはできる、理由があるとそれだけだ。
神妙に頷く順平がどんなことを考えていたのか、あきらにはわからなかった。ただ、この子供もじきに自分なりの答えを見つけるのだろうと、信じていた。