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邪魔者

※姉と同期のモブ視点
※離反などなかった

 

晴れて酒が飲めるようになった。
同学年のうち誕生日の遅い方である自分の成人をもって、これで呪術高専五年の二人組が酒もタバコも正式に解禁ということになる。
まあ以前からことあるごとにこっそり飲んではいたので、味を知らないわけではないのだが、それはそうとしっかりした区切りではあるから、せっかくだし祝いをしようということになっていた。
誕生日だしねと柔らかに笑う同級の五条あきらを思い出して少し顔が熱くなる。
ケーキはあきらの方で用意してくれるということだったから、缶ビールやらつまみやらなんやらの入ったビニール袋を下げて、目的の部屋の前で少し呼吸を整えた。
よし、と小声で呟いてから、自分の暮らす部屋と同じ古い扉を叩く。
コンコンと乾いた木の音がする。

「あきらー」

何の気負いも表に出さない、我ながら完璧ないつも通りの声だ。
ほどなくしてトタトタと足音が聞こえ、鍵の外される音がする。少し軋みながら開いた隙間に、あきらの顔を予想して「よぉ」と笑顔を向けた。

しかし。

「よぉ先輩」
「は?」

なぜかそこには生意気な後輩が、笑顔を浮かべて立っている。
あきらの弟、五条悟。
御三家たる五条家の跡取りにして特級で自分より年下のくせに背も高くガタイも良くついでに顔がいい男が、不機嫌なオーラを出しながら顔だけで自分に笑いかけている。
え、と固まっていると五条の後ろからあきらが姿を現した。

「ほんとごめん」

申し訳なさそうにこちらを見て両手を合わせている。

「いきなり来ちゃって。ていうかなんか……」
「おじゃましてます」
「してまーす!」
「みんな来ちゃって……」
「…………」

またひょこひょこと登場人物が増えた。
相変わらずうさんくさい笑顔の夏油傑に相変わらずマイペースに楽しそうな家入硝子。
ちらりと後輩たちを見遣り、あきらが「いっしょでいいかな?賑やかだし」と眉尻を下げる。

「お、おぉ……」

となるともう頷くしかない。

「ごめんね……」
「なんで謝んだよ。せっかくの誕生日なんだしみんなで騒いだ方が楽しいじゃん」
「あんたたちいると収拾つかなくなるでしょうが」
「お、ビール貰います先輩〜」
「ケーキもありますよ先輩」

すでにその兆候がある後輩たちに呆れながら、あきらが部屋の奥に進んでいく。
こうなれば仕方ない。二人きりで飲んでそのうちちょっといい雰囲気になっちゃったりなんかしてー!と今日までしばらく抱いていた夢は終わりだ。
少々落ち込みつつ後に続くと、ポンと五条に肩を叩かれた。

「先輩」
「なんだよ……」
「誕生日オメデト」
「おぉ、ありがとな……」
「あと、ご愁傷様」
「………………オマエ」

いや普段あの態度でシスコンなの?マジで?

悔し紛れに睨んでも何の効果もない。薄い唇の端を持ち上げて、五条はいい気味だと言わんばかりに笑っていた。