※学生時代
「十代男子が一人称私ってどうかと思う」
「…………」
ピキ、と額に青筋を立てながらも、夏油の表情筋はなんとか笑顔を維持した。
あきらというひとつ上の先輩はいつでも失礼な人間である。
夏油自身は年が下だからと言って彼女に精神年齢で劣っているとは思わないし、そもそも周りの大人よりも、精神・能力共に実際優れている自覚もあった。
背伸びをしているつもりはないのだからそんな風に言われたくはない。
ふ、とひとつ息を吐き、夏油は口を開く。
「先輩も一人称は私ですよね」
「は?私は女じゃん」
「そうでしたか?」
「…………」
きっちりやり返してきた後輩の涼しい顔を見て、あきらがひくりと口元を引きつらせた。
「……夏油、ちょっと外で身体動かそうかぁ」
「構いませんよ、先輩」
失礼な先輩と失礼な後輩、似た者同士は二人揃って立ち上がると、肩を回したりしながら外へと向かう。
途中すれ違った後輩が、明らかにピリピリしている様子の二人を見て、ヒェッと悲鳴をあげていた。