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理子と戯れる

トイレから帰ってきたら自分の席がクラスメイトの誰かに使われているなんて、大して珍しくもないことだ。女子中学生の大体は友達とのおしゃべりが好きで、時に夢中になりすぎて周りへの気配りを忘れてしまう。
運悪くその被害を受けて、自分の席周りでおろおろしている友人に向かって、あきらは声を張り上げた。

「理子ー、こっちおいでよ」
「! うん!」

あきらに呼ばれたのに気づくと、理子はぱあっと顔を明るくして、いそいそとこちらに向かってくる。
なんだか動きが小動物っぽい。
途中人の机にぶつかりながらも、理子はなんとか窓際のあきらの席にたどり着く。ようやくやってきた友人を迎え入れるように、あきらは腕を広げた。
へ?と理子が不思議そうに首を傾げる。

「ん」

てしてしと自分の膝を叩いて促すと、やっとあきらの意図がわかったらしい。理子が困惑気味に眉尻を下げた。重いよ、と言われて、へいきへいきと返す。
少し迷ってから、結局あきらの促す通り、理子が膝の上にちょこんと座った。遠慮がちにもほどがあるってくらいの体重のかけ方だ。

「よいしょ」

腰に手を回し、えいっと引っ張って深く座らせると理子が「ひゃあ!」と鳴き声のようなものを上げた。

「ほ、ほんとに重いよ?」
「平気だって言ってんじゃん」
「でもぉ」
「いや、…………ていうかホントに軽いって。ちゃんと食べてる?」

がしっと細い腰を掴むと、理子がまたひゃあぁと悲鳴を上げた。
どうやらくすぐったいところを触ったらしい。
大きな声が出たことに驚いて、口を押さえた理子と目が合った。

「…………」
「………………フフフ、」
「えっちょっ、あきらちゃん、やめ」
「よいではないかよいではないか~」
「あははは!!」

あまりに理子の反応がいいせいでちょっと面白くなって、そのままくすぐり続けていたら、他の友人に頭を叩かれてしまった。
助けを得て逃げ果せた理子は、目に涙を浮かべながら友人の陰に隠れてこちらをきっと睨んでいる。

「だってさ~」
「だっても何もないでしょうが!」
「そうじゃそうじゃ!」
「……ん?」
「今なんて?」

妙な相槌を聞いたのはあきらだけではなかったらしい。
あきらと友人の二人にまじまじと見られた理子が、えへへぇとごまかすように笑う。理子にとってはおそらくタイミングのいいことに、休みの終わりを告げる鐘が鳴った。