「あきら、僕にも飴ちょうだい」
「…………」
さっき鞄から取り出して食べたのを見ていたのだろう、五条はソファーに踏ん反り返ったまま、尊大な態度で言った。覚えた苛立ちを押し殺し、あきらは無言で鞄の中身を探る。飴の入った小袋をごそごそと取り出して、五条の近くの机の上に置いた。「どうぞ」と言ってみるが、五条はツーンと上を向いたまま、口を大きく開くだけだった。
「開けて」
子供か。
だがしかしどこかの同期のように、ご自分でと逆らう勇気はない。眉間に皺を刻み込み、たった今置いたばかりの飴に手を伸ばすと、これまた無言で包装を開ける。赤くて丸い中身を摘んで、こういうの嫌なんだけどなあと思いながら立ち上がり、ぽっかり開いた五条の口元に持っていった。
「どうぞ」
「ん」
飴から指を離す前に五条の口が閉じる。指の先が口の中に入り、ついでにぺろっと湿った感触がしてあきらがぎゃあ!と悲鳴を上げた。「きったな!」と素直な感想を漏らすあきらに、「失礼な」と五条が怒る。
「相変わらず色気とか欠片もないよねオマエ」
「なくていいです。ほんとやめてくださいよこういうの……」
「いいじゃん」
「よくない。飴も自分で食べてください、子供じゃないんだし」
「またまたぁ」
ついでに小言も挟んでみるが効いた様子は一つもない。「僕にわがまま言われるの好きでしょ」とそんな的外れなことまで言い出したので、あきらは呆れて大きなため息で答えた。