「加茂憲紀だ。これからよろしく頼む」
初めて会った同級生は、姿勢良くこちらを見据えてそう言うと、あきらに向かって軽く頭を下げた。御三家の出身だというからどんないけすかない奴が来るかと思っていたのだが、意外にも礼儀はあるらしい。そこはいいのだ。問題は全く別のところにある。
黙ったままのあきらの方を見つめ、加茂が不思議そうに小首を傾げる。どうかしたか、と尋ねられてもまだ、あきらはまともに答えることができない。
「あ、あのさ……」
戸惑いながらやっと口を開き、あきらはこほんと咳払いをする。先を待つ加茂の頭の上から、足の先までを見て、口の端を引きつらせた。
「その制服……」
何と言えばいいのだろうか。
千年くらい前に貴族だか陰陽師だかが着ていたような服を、加茂は堂々と着こなしていた。ご丁寧に呪術高専の生徒の証であるボタンもついている。ごく一般的な女子制服を着ているあきらとの共通点は本当にそれだけだ。
要するに奇妙なのだ。学生の格好ではないし、ましてや普段着でもない。どこか浮世離れした雰囲気の加茂にはとても似合っているけれど、だからこそとにかく目立つ。正直一緒に歩きたくない。
常時目隠しをしている人間の横を歩くのより恥ずかしいことはないと常々思っていたのだが、これは負けず劣らずだった。同学年でお互い単独任務の許されていない三級なことを考えると、本当に勘弁してほしい。
「私の制服がどうかしたのか?」
何もわかっていない加茂はやっぱり不思議そうな顔をしていた。
「…………」
いやどうかしてるだろ。明らかに。
しかし生憎常識というものを持っているあきらには、それを素直に言うという選択肢がなかった。
呪術師なんか変なやつばっかりだから!覚悟しなよ!と豪快に笑っていたどこかの変人代表のことを思い出す。
「高遠?」
「…………なんでもないよ。よろしく、加茂くん」
少し不安だったのだろう。ほっとした様子で微笑んだ加茂を見ながら、早く二級に上がろう、とあきらは密かな決意を抱いた。