「好きなタイプは?」
「高身長高収入高等級」
とあきらが答え、つまらない性癖だと東堂が涙を流してからもう三年近くになる。直後キレたあきらが何がつまらん性癖だと東堂の横っ面を張り飛ばし、そこから京都校の一角で派手な戦闘が始まった結果、あきらは不本意ながら東堂の友人としての地位を確立した。要するに、結構イカれた奴、といった評価を周囲からはいただいていることになる。
「東堂」
東京に向かう新幹線。右手に持った手鏡を覗き込みながら、隣の席に座る同級生にあきらが呼びかけた。なんだ、と答える東堂は真剣な表情で今月号の雑誌を読んでいる。姿勢を正して女性誌を読む東堂の姿は少し気味が悪いが、多分高田ちゃんのインタビューか何かが載っているのだろう。
「五条悟の好みのタイプ知ってる?」
「高遠、あんたね……」
反応したのは通路を挟んで隣に座る庵歌姫だ。あきらの好みは周知の事実なので今更驚きはしないが、その対象があの五条悟、ろくでなしとなれば話は別だ。条件は満たしているのかもしれないが、あきらからすると大分年上な上に教師である。さすがにどうかと呆れが出た。
けれどそんな引率の教師は無視し、で、どうなの、とあきらは続けて東堂に問うた。
「ああ、知ってるぞ」
「どんなのがタイプだって?」
「『僕より背の低い子』だそうだ」
「チッ」
なんの参考にもならない。
五条悟は東堂と張るくらいの長身だから、その条件には地球上に住む女のおおよそ全てが当て嵌まる。外れる方が難しい。はぐらかされたに違いない。
役立たずの同級生に対して舌打ちをし、あきらは黙り込む。前髪を整え終わると鏡をしまった。
「今度あの、七海さんだっけ、あの人の好みも聞いてきてよ」
「Mr.七海だな。わかった」
軽く答えた東堂の言葉に満足げに頷いて、今度はスマホを手に取る。聞いているだけで疲れる問題児二人の会話は、そこで一旦の終わりを迎えたようだった。