※コレと同じ夢主
明るい色の前髪が、三輪の大きな瞳を少し隠して揺れている。前髪伸びたねえ、とあきらが声をかけると、素直でかわいい後輩はホントですね、とはにかんだ。
「後で切っとかないと」
「ん?」
あきらは訝しげに首を傾げる。
「……切りに行くんじゃなくて?自分で切るの?」
「はい!」
「び、美容院は」
「そんな勿体ない。このくらいなら鋏でじゃきんと」
「ええ!?」
カルチャーショックだ。それなり以上に裕福な家庭に生まれ、今は呪術師として生計を立てるあきらは所謂お嬢様育ちで、今まで金銭的に困窮したこともなければ髪を美容院以外で切ったこともない。ひきつった顔で一度咳払いをし、おそるおそる、と言った様子で後輩の顔を見る。
「鋏って、その、ちゃんとした……?」
三輪はにこっと笑って、もちろんちゃんとした鋏ですよと言った。ホッとしたのも束の間、
「小学校の時のですけど、まだ全然使えるんです」
「え」
どこか誇らしげに言われ、あきらがビシッと固まる。
本人は隠さず明るく生きているから、三輪の家に金銭的余裕がないことは勿論知っている。家族のために命の保証のない呪術師という生き方を選択した三輪の健気さに好感を持っている。それでも。
「そ、そっかあ……」
ぎこちないあきらの様子に首を傾げつつ、三輪は元気いっぱいにはい!と言った。
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「真依?どうかした?」
夜、いきなり部屋を尋ねてきた同級生に、三輪は不思議そうに目を瞬かせた。嫌そうな顔をして、はーと息を吐いた真依は「コレ」と言いながらずいっと紙の箱を差し出してくる。三輪が反射的に受け取ると、「あきらからよ」ともう高専を卒業した先輩の名を告げた。
「あきらさんから?」
「ええ、……知り合いの美容師の人がくれたんですって。使わないからアナタにって」
言いながら真依はものすごく呆れたようなな面持ちでこれを差し出してきた腐れ縁の相手のことを思い出している。
なーにが美容師の知り合いだ。箱の中に入っているのはおそらく新品の鋏だ。あの馬鹿のことだから、きっとそれなりの高級品を買っている。あきらは「せめてこれで……」と唸っていた。馬鹿だ。
「えっ、ホント!?」
「……ええ」
「お、お礼の電話しなきゃ……」
「喜ぶわ」
それはもう、きっと馬鹿みたいに。
こんなバレバレの嘘を吐くあきらも馬鹿だが、信じる三輪も三輪だと思う。はーあと呆れた顔の真依に気づくことなく、なんだか貰ってばっかりだなあと三輪は眉尻を下げていた。