不思議だとは思っていたのだ。悪い意味で個性豊かな呪術師たちが、交流会の時期になるとみんな一様にその勝敗を話題にあげる。一緒の任務にあたった卒業生の先輩なんかが京都校に負けんなよとかわざわざ声をかけてきたりする。勝ったら勝ったでよくやったとか言ってジュースを奢ってくれたりする、誰々がいい働きしたらしいなとか在学の被らない後輩の名前を口にしたりする。
そんだけ両校の確執が根深いってことか、と学生だった四年間それなりに納得はしていたのだが、
「あきらも賭けるかい?」
久々に会った冥冥、尊敬すべき先輩術師がそう言ったのを聞いて、あきらはやっと全てを理解した。
「そういうことだったんですね……」
「うん?」
何について賭けるかなんてもうすぐ交流会だね、から始まった話題なんだからわかりきっていて、賭けるものが何かなんて相手がこの人の時点でわかりきっている。
金だ。賭博だ。道理で呪術師たちの交流会への関心が高いはずだ。
こういうのって犯罪では、と呆れ顔で言ってみたが、冥冥は「規模も小さいしただの遊びだよ」と悪びれもせず言う。
「で、どうする?」
再度促されて、戸惑いながらじゃあ東京校で、とあきらは答えた。わかったと微笑むと、冥はポケットからスマホを取り出し、なにかメモをとっている。その様子を眺めて、あきらはふと疑問を口にする。
「冥さんはどっちに賭けてるんですか」
「私?」
冥冥はくっと口の端を持ち上げて優雅に笑った。
「私はやらないよ」
意外な答えに、あきらがへ、と首を傾げる。
「監視役が参加したら不公平だろう?だからただの雑用係だ」
「……」
要するに胴元ということらしい。
賭け事で一番儲かるのは元締めだという無駄な知識を思い出し、あきらは遠い目をした。