「先生って車運転できるの?」
ふとわいた疑問を投げかけると、待機室で担当の補助監督を待ってごろごろしていた五条が、「できるよ」と普通に答えた。大袈裟に驚いてみせたら少し口を尖らせ、ポケットをごそごそやって、財布から免許証を取り出す。
「ホラ」
「おー、ほんとだ」
差し出された免許証にはさすがに目隠しを取ってこちらを見据えている、やたらと整った顔がある。
証明書の類の写真って普通写りが悪くなるものじゃないのか。
自分の学生証に貼ってある写真を思い出して何ともいえない気持ちになりながら、「ゴールドってやつ?」と聞いた。
「そう……いや、違うな。一回違反食らったっけ」
「へー。酒気帯び?」
「違うよ。僕飲めないし」
「そうなんだ!?」
「ソウダヨ〜」
意外な情報に驚いていると、五条は顎に手を当ててなんて言うんだったかなアレと呟いていた。
「危険運転?的な」
「何したの……」
「別に何もしてないよ。コレ、」
自分の目を覆い隠す目隠しを摘んで示し、五条が言った。
「つけたままなの忘れて運転してただけ」
「……それは……ウン……」
見るからに危ない。紛れもなく危険運転だ。
「見えるんで問題ないんですよってちゃんと言ったんだけど駄目でさあ。しばらく白バイと揉めて、結局伊地知に連絡して別方向から手を回して貰いつつ、なんとか解放」
「……」
「もう乗らない。基本誰かに運転させるし。なんかあった時はトぶし」
「その方がいいかもね……飛ぶ?」
「うん、トぶ」
特に説明をする気はないようだ。あきらの頭の中で背中に羽根を生やした五条がアハハハハと笑いながら飛び回る。どこか馬鹿っぽくて似合っていた。
「えーと……よかったね?」
語尾を上げつつ、免許証を持ち主に返却したあきらだった。