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好みのタイプが知りたい五条

※学生時代

 

自分たちの他に人気のない休憩所で、五条は真剣な顔をして一つ下の後輩の両肩を掴んでいる。最初に捕まえた方の後輩には全力で逃げられてしまったので後がないのだ。この後輩──灰原だって決して頭が悪いわけではないのだが、ついうっかり、悪気なくまずいことをやらかすことがそこそこあるため、念には念を入れて言い聞かせているのだった。

「いいか、俺に言われて聞いてるってことは絶対言うなよ」
「はい!」
「聞き終わったら一直線にこっちくるんじゃなく、適当にうろついてから戻ってこい」
「わかりました!」
「……よし!硝子!」
「んー。練習場向かうの見た」
「練習場な!しっかりやれよ、灰原!」
「任せてください五条さん!」

張り切って走り出した後輩の背中を、五条は腕を組んで見送った。そしてそんな親友を見て、夏油が苦笑している。

「……で、戻ってくるまでここで?」
「おー。傑も硝子も付き合えよ」
「いいけどジュース買って」
「仕方ねぇな」

ポケットから財布を取りだした五条が自販機に向かう。
そうしてジュースとお茶を買わせて、五条たち同期三名はだらだらと会話をしながら灰原が帰ってくるまでの時間を潰した。
同期というなら実は一人足りないのだが、その人物が今回の目的であるからこれは仕方ない。今頃きっと後輩の突拍子もない質問に驚きつつ回答していることだろう。

灰原は二十分ほどで、行きと同じ張り切った様子で帰ってきた。落ち込んでいないところを見ると目的は無事果たせたらしい。
五条がごくりと息を呑み、「……どうだった」と聞いた。

「性格がいい人って言ってました!」

輝く笑顔で後輩は言った。五条が硬直し、しばらくその場に沈黙が続く。そして。

「ダメじゃん」
「次があるさ悟」
「まあ世の中の女子はあきらだけじゃないし」

ぽん、と右と左の肩がそれぞれ慰めるように叩かれ、同期たちは励ましているのか貶しているのかわからないことを言う。固まってしまった先輩と、笑いをこらえている様子の先輩たちを交互に見て、灰原が目を丸くしていた。