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どっかのバー/五条

※もし五条が本当は下戸じゃなかったら

 

「あのさぁ」

からん、と溶けた氷が崩れる音がした。
目の前のカクテルは何杯目だったかわからないし、もう正直飲みたくない。立ち上がっていないからわからないが、もしかするとまともに歩くこともできないかもしれない。
誰かに言われなくてもわかる、キャパシティを超えている。

「なぁに」

後輩が応えた。下戸らしいですよと噂を聞いたはずの後輩は、中身を飲み干した空のグラスを机に置いた。ちょうど通りかかったバーテンに次の注文を通している。

「あきらも何か飲む?」
「……水」
「じゃあ水も」
「畏まりました」

一礼して去っていくバーテンを見送って、五条はあきらに向き直った。
で、なに、と分かりきったことを平気そうな顔で言う。
最初の方に結構なペースで酒を勧めたはずだから、あきらよりは飲んでいるはずなのにこの様子だ。あきらがどこかふわふわしている思考の中、それでもじっとりとした目で正面の五条を睨んだ。

「あんた、下戸じゃなかったの」

五条がぱちぱちとわざとらしく瞬きをした。

「そんなこと、言ったことあったっけ?」

返答を聞くなりぐうと唸り声を上げ、あきらは机に突っ伏した。頭を打ち付けた音を聞き、ケラケラ笑う五条の声は、酔っているせいか随分遠くから聞こえた。