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五条の彼女と話す

※過去編軸
※夢主≠五条の彼女

 

「ごめん、ちょっといいかな」

五条が最近付き合い始めた二つ下の後輩は、あきらと硝子が声をかけると少し警戒したような表情でなんですか、と言った。
じり、とまるで敵と対峙しているかのように足に力が入っており、こちらを見つめる目には敵意が混じる。落ち着いてと言うと逆効果な気がして、あきらは苦笑しながらもそのまま本題に入ろうとした。

「五条と付き合ってるんだよね?」
「……そうですけど」
「そんなに警戒しないでってば。五条と付き合うなら気をつけた方がいいと思って、忠告しに来ただけだから」
「何言われても、別れませんから!」

まだ何も大事なことを伝えないうちに、後輩は意を決したように大きな声を出すと、あきらと硝子をきっと睨んだ。

「好きなんです。五条先輩も好きでいてくれてるので!」

先輩たちには何も言われたくありません!と最後に叫んで、その子はスカートを翻し、もう用はないとばかりにその場を走り去った。残された硝子と顔を見合わせて、あきらはため息を吐く。

「……なんか勘違いされてるよね」
「されてるね。愛されてるなぁ五条」

ちょっと感心したような口調で返す家入が、あの子にとっては恋は戦争なんだねと付け加える。
後輩が走っていった方向を見ながらあきらは眉尻を下げた。

「……大丈夫かな」

どこかの誰かがいなくなってから、五条はその力と立場を利用して無理を押し通すことが増えた。その分どんどん増えた敵の、臆病な矛先がどこに行くかといえば、それは五条本人ではなく、五条の周りだ。
現にあきらはこの半年だけでも、等級にしては不自然な任務を当てられて何度か死にかけている。硝子と違ってレアなスキルのないあきらは、上層部にとって体のいい標的なのだ。

ただの同級生でもこれだ。
──恋人なんてものがいると知れたら、それはもっと危険なんじゃないか。

そう思ったから、ちょっと忠告しておきたかったのだ。

「ま、仕方ないよ、あの子が聞かなかったんだし」
「うーん……」
「今何言ってもライバルからの脅しにしか聞こえないって」
「それはやだね」
「でしょ」

あははと笑いあいながら、それでもやっぱり、後でどうにか声をかけられないかと考える。
後輩に死んでほしくないという気持ちも勿論ある。けれど何より、五条が誰かを失うところを、あきらはこれ以上見たくはなかった。