※過去編の展開を大いに捏造しています
深刻な病があったとする。
それを治す薬は二つ。一つはその病しか治せない薬、二つ目は他の病気も治せる薬だ。
一般人の中から見つけ出された前者は彼女で、後者があきらだった。
だから本当は、どっちだってよかったのだ。
他に呪術師としての使い道があるから見逃されていただけで、現に彼女に何かあれば、その役はあきらが負ったはずだった。
天元様との同化を終えた彼女はもう彼女ではなく、ひょっとすると死ぬより悪い。自我を捨て過去を捨て、今やこの世界の理に近いものになっている。
もう夏油の声は届かないし、彼女が笑うことも、返事をすることもない。
「私がなればよかったね」
あきらはずるい人間だったから、こんなどうしようもない段階になってから、夏油に秘密を打ち明けた。言わずに抱えていられるほど、強くはなかった。
夏油は優しい。だから目の前の人間を切り捨てることなんてできないだろう。たとえばこんなあきらのような、弱い人間であっても。
「……そんなことは思ってないさ」
教室で見るようないつもの笑顔を浮かべて、夏油が言う。
ごまかし笑いが上手だなと思った。あきらは少し泣きたくなって、そうだといいなと呟いた。