最近どうも、緑間がキラキラして見える。
「おかしいっス」
「うん」
「緑間っちよりオレの方がキラキラしてるっスよ」
「……」
ちょっと聞いて欲しいことがあるんだよね、と言えば黄瀬はホイホイとついてきた。教室では誰が聞いているかわからないので、それぞれ昼ご飯を持って、私たちは開きっぱなしの視聴覚室に入り込んでいる。
しかしこれは。
自分で選んでおいてなんだが、相談する相手を間違えたかもしれない。
私はため息をついて黄瀬を見た。不評を買ったと察してか、慌てて「だってオレ今人気急上昇中のモデルっスよ!?」と言葉を重ねるが、何のフォローにもなっていない。
大体黄瀬の言っているキラキラと、緑間の周りに在るそれとは全く別物なのだ。
「心象的なものじゃないんだって。もっと物理的にキラキラしてんの」
なんて言えばいいのだろう。緑間の周りを目に見えない粒子が漂っていて、それらが風や光の加減で、キラキラと不規則に輝いている。目の錯覚や、黄瀬の言う心象的なものとは一線をかくすものが、ずいぶん前から私の目にははっきり見えるようになっていた。
別にこれと言って生活に支障があるわけではないのだが、気になりはする。
「物理的……つまりオレの笑顔がキラキラしてる、って女の子が言うのとはまた違うんスね」
「そーいうこと」
「わかったっス!」
「は?」
「なんだ、そういうことならもっと早く言ってくれればよかったのに」
「黄瀬?」
「ダイジョーブ! オレがついてるっスよ!」
勢いよく立ち上がると、任せて!ともう一度自信満々に吠えて、どこかへ行ってしまった。興奮気味に飛び出していったせいで、乱暴に開けられたドアが反動でものすごい音を立てて閉まる。目を丸くしつつ、とりあえず弁当を食べ、時間を見るために携帯を取り出した。ら、メールが一通着ていた。黄瀬からだ。『大丈夫っス!!!あと桃っちにもちゃんと言っといたから』とよくわからない内容であった。
原因もなにもわかっていないのに、一体何が大丈夫で、一体何を桃井に言ったのか。面倒ごとが進んでいるぞという予感がふつふつとわき上がる。
それでも一応教室に戻ると、扉のところで、ちょうど出て行くところだった緑間とぶつかった。今日もやっぱりキラキラ光る粒子をオーラのように纏っている。接触したはずみで移ったのか、私の周りでも一瞬きらめいたが、すぐに弾けて消えてしまった。
「ごめん」
「……いや」
「? なんか緑間、変じゃない? どうしたの」
なにか用事があったのだろうに、緑間は突っ立ったまま私を見ている。
「ど、どうもしないのだよ!」
訝しげに尋ねた答えがこれだった。さっきの停滞が嘘だったかのように、緑間がすごい勢いで隣のクラスへと入っていく。赤司にでも用があるのだろう。
すると教室に帰ってきていたらしい黄瀬と目が合う。バカみたいにゆるんだ顔をして、親指を立てている。
「あきらちゃんよかったっスねー! 脈ありっスよ!!」
「馬鹿犬……」
「馬鹿犬!? なんで!?」
数日が過ぎて、今日も今日とてキラキラしている緑間は、その視線を私に向けている。ふとそっちを向くと逸らされる。
やっぱり相談相手として黄瀬を選んだのは失敗だった。
美形のキラキラでも恋のキラキラでもない、緑間は物理的にキラキラしてるんだって。他には見えてないみたいだけど。
もういっそ恋のキラキラとしておいた方が楽なのかもしれない。